コラム
【2018年5月コラム】
新入社員の育成とメンタルヘルス

産労総合研究所から「2018年度新入社員のタイプ」について、「SNSを駆使するチームパシュートタイプ〜SNSを活用してグループの協力関係を作り、スピーディーに活動〜」であると発表された。就職内定率は過去最高の91.2%。7年連続で「売り手市場」傾向が続く中、仲間同士でSNSを駆使し、短期決戦で就活を終えた2018年度の新入社員。ゴールデンウイークが終わり、いよいよ配属先での仕事が始まったころだろう。

新入社員は就活をゴールした達成感もつかの間、先輩や上司のアシスタント業務に追われ、「自分にとって、この仕事をすることで成長できるのか」「モチベーションが上がらない」など、ネガティブスパイラルに陥りやすい時期でもある。ゴールデンウイーク中に、SNSで友人と情報交換をすれば、“隣の芝生は青い”で、意味もなく自分の判断が間違っていたのでは、と不安や不満が増幅される。

健康社会学者の河合薫氏は、五月病の真偽を研究する中で、「約束破りの効果(broken promise effect)」に着目した。春先は草木も人間も成長を期待する心理が働き、その希望と現実のギャップが影響して五月病の症状が現れるという。他方、国際医療福祉大学教授・精神科医の和田秀樹氏は、「不適応思考」がうつ病発症や悪化の引き金となり、不適応思考を修正するメンタルヘルス法が有益であると唱える。物事を白か黒か、味方か敵かといった二分割で考える二分割思考や、相手の心を勝手に決め付ける「読心」といった思考のクセを修正し、「かくあるべし」と決めつけるのではなく、代わりの思考パターンを身に付け、妥当な着地点を見つける。

いずれも、新しい環境への不適応がメンタルヘルス不調の直接的な要因でなく、それぞれの人の志向性や考え方が大きくかかわっているとの考察だ。当社の「メンタルエクスプレス」では、ストレスチェックに加え、性格傾向(物の見方)についての分析も行っており、0次・1次予防に効果を発揮している。「仕事に慣れれば不安もなくなるよ」「今は考えすぎないで言われた通りにやっていればいい」などと新入社員に話をしている管理職のあなた。この機会にじっくりと時間を取って新入社員と話をしてみるといいだろう。どんな期待を抱いて会社に入ってきたのか、今は何にとらわれているのか。仮に「できないと言ったらバカにされる」「こんなはずじゃなかった」とネガティブな思いにとらわれているなら、キャベツの葉をはがすように、1枚1枚、ゆっくりと丁寧に不安や不満を取り除くよう話し合うこと。いうまでもなく、自慢話や押し付けは逆効果になるので、新入社員の思いに寄り添う姿勢が大事だ。

<次回の更新は6月下旬の予定です>

※本記事の無断転載はご遠慮ください。

【2018年3月コラム】
ゲートキーパー:「気づき・傾聴・つなぎ・見守り」

1年で自殺者が最も多い3月は「自殺対策強化月間」です。

基本法及び大綱に掲げる「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現に向け、平成29年度の自殺対策強化月間においては、国、地方公共団体、関係団体及び民間団体等が一体となって、悩んでいる人が支えられ、つながることができる社会を目指し、各種相談事業等を積極的に実施するほか、周囲の人に寄り添える「ゲートキーパー」の行動、役割の普及を重点的に実施します。

<出所:厚生労働省 こころの耳>

この取り組みの一環として、Yahoo!特別企画ページ「悩んでいるあなたへ、支えたいあなたへ」(自殺対策強化月間)のサイトが開設され、「ゲートキーパー」の啓発を行っています。ゲートキーパーとはその名の通り「門番」の役割を果たす人。自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)を図ることができる人のことです。

近年、若者の自殺が増加傾向であることが問題視されている中、私たちは職場の部下や同僚に対するキーパーであると同時に、家族のキーパーとしての役割を担うことも重要になっているのです。日頃、お子さんや妻(夫)と話をする時間が短いと感じているあなた。ゲートキーパーについて学び、行動してはいかがだろうか。

<次回の更新は4月上旬の予定です>

※本記事の無断転載はご遠慮ください。

ページトップ